目撃場所/エレベーター
(今回の目撃写真は まんぼうくん様にいただきました)


エレベーターに閉じこめられるピクトさん。一心不乱に扉を叩く姿が涙をさそう。エレベーターには「非常用」というボタンがついており、それを押せば管理者と通話できる仕組みになっている。だが我々の多くは実際にそれを確かめたことはない。だから私はエレベーターに乗っているとき、「ほんとにちゃんと人が出るのかな」などと思い、時々ボタンを押したい衝動に駆られる。いちおう大人なのでなんとか我慢しているが、昔からずっと「押したいボタン」であり続けている。おそらく非常用ボタンを押すチャンスは一生巡ってこないだろう。しかしピクトさんには巡ってくるのである。今扉を叩きながらパニック状態に陥っているピクトさんであるが、しばらく時間が経てば非常用ボタンの存在に思い至るはずだ。ピクトさんを羨ましいと思ったことは一度もないが、「あのボタンを押せる」今回のピクトさんに対しては、若干の羨ましさを感じる。


我々が人間の心に発見する最初にして
もっとも単純な感情は好奇心である。
バーク